不判例
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■第1 実務において判例を活用する場面iii具体的なすべての事件は事実が異なっていますから、条文解釈についても、事案に即したものでなければなりません。判例(裁判例)は、これまでに生起した法律問題に対して、個別の事案ごとに法律の解釈とあてはめを示したものです。具体的な事件にあたっては、これまでの判例のなかから、類似のケースを見つけ出して、これと同様の思考過程をたどることによってはじめて、条文解釈を通じた法律問題について、合理的な結論を導くことができます。現代社会においては、社会的ニーズは日々刻々変化し、法改正も頻繁に行われます。専門家といえども、日常業務において問題に直面したときに基本的知識を確認するだけでは、到底的確な対応をすることはできません。専門1(場面1)具体的な事件にあたって、事件の解決のために必要な判例を調べる専門家は、法律問題が生じたときには、事実を確定してこれを条文にあてはめ、効果の有無を判断するという思考過程によって、問題の解決を導きます。しかし、法律の条文がいかなる意味をもつのかは、多くの場合に一義的ではなく、解釈が必要です。2(場面2)具体的な事件のためではなく、法的な意見を求められた場合に、これに回答するコンプライアンスが重視される現代社会では、一般的に、社会制度を設計したり、事業判断を行ったりするにあたって、専門家の意見が求められます。意見書という形をとって、書面を作成し、提出することも、多くなっています。専門家が意見を表明するにあたっては、判例を参照し、裁判例によって意見を根拠づけることは、説得力の源泉です。3(場面3)基本的知識を身につける判例調査の必要性と本書の利用方法

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