事例でわかる 任意後見の実務
25/38

す。そのため先天的に判断能力を欠く人は、法定後見を利用することになります。もう一方の契約当事者である任意後見人(契約の時点では任意後見受任者)は、契約によって付与された範囲で、本人の生活、療養看護及び財産管理など本人を代理して行います。ア 業務の内容 代理権を用いた法的サービスが業務の中心で、介護のような直接的な事実行為は業務の範囲ではありません。任意後見は、「任意後見契約に関する法律」(以下「任意後見法」といいます。)に定められていて、一般法の民法を一部準用しています。本人が意思表示のできる間に「本人の自己決定の尊重」と「本人の保護」との調和を図る観点から、平成12年4月から運用が始まりました。イ 付随する業務 任意後見契約の際に、契約の発効前に必要な業務や契約終了後に必要な業務を任意後見に付随する業務あるいは任意後見を補完する業務として加えることができます。 任意後見契約の前段階として、いつ判断能力が衰えるか分からないという不安の解消のために見守り契約を結んでおくとよいでしょう。判断能力の低下はないものの、体が不自由になって本人に代わって金融機関に行ってほしい場合や、身上監護(保護)等の契約を代理で行ってもらうために財産管理等委任契約をすることができます。本人が亡くなった直後には、本人の入院中の病院代の支払や葬儀や納骨のために死後事務委任契約を結び、死後の手続についての契約をすることもできます。任意後見の契約時に運用の仕方などが定まっていない財産などは、任意後見契約の財産目録から外して民事信託を利用することも考えましょう。 (本編第6章、事例編第2章、第5章を参照ください。)52  任意後見制度の概要と流れ

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る