ii はしがき例を示すことで,当事者のニーズに合致する書面の起案をしたり,審理過程をリアルにイメージして,関係者が,適宜解決に向けた働き掛けができるようナビゲーションすることを目指している。 第3に,実務上重要な知識の部分は「実務の基礎」において,また,物語のストーリー解説や代理人に向けた事件の進め方,子の福祉を念頭にした実務を実践するに当たっての留意点については,家庭裁判所での実務経験をインプットしたAI風ロボットによるQ&Aや解説を試み,もう一歩先の考えを深めてもらえるような工夫をしている。なお,家裁調査官の視点に基づく当事者や子どもの心情分析等については「中山EYES」として論述している。 また,離婚調停及びこれが不成立になった場合におけるその後の進行,離婚に関連する各紛争も知っておくことが重要であるという視点から,第1編の第7章において,子の監護に関連する紛争を説明するとともに,第2編の第3章において,合意による解決ができなかった場合の物語を別途示している。合意による解決に至らない事案が少なくない中で,本章では審判に至るまでの手続を説明し,調停・審判による早期で終局的な事案の解決の有用性,すなわち,合意による解決の重要性を具体例によって示すことを試みている。 本書が,監護者指定の判断基準とその考慮要素及び「子の利益」に関する基本的視点,論点を示すものとして,弁護士,裁判官,家裁調査官,家事調停委員など実務に携わる方々の参考になれば幸いである。なお,本書における記述は筆者ら個人の見解であり,所属する組織の見解とは異なることがあることをお断りしておく。 今回の刊行に当たっては,大森啓子弁護士から,子の監護をめぐる紛争に関与する代理人の立場からみた各手続と代理人の活動の実情についてご教示をいただいた。 また,業務繁忙の中,秋枝和子さん(宇都宮家庭裁判所家事部書記官)と仁尾光宏さん(東京家庭裁判所家事部主任書記官)には,原稿の校正の
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