2 発信者情報開示請求 〈刑事事件化〉13⑴ 投稿者特定の必要性⑵ 実体法上の根拠⑶ 投稿者特定の方法 ネット記事に対する対抗措置 記事を削除しただけでは足りず,投稿者を特定したいと考える被害者もいます。投稿者を特定したあとは,①損害賠償請求(個人であれば慰謝料請求),②削除請求(投稿者自身による削除ができる場合),③差止請求(もう二度と書かないようにという将来の差止請求),④謝罪を求める,といった措置が予定されています。 投稿者の特定には,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,本書では「プロ責法」と表現します)5条1項と2項の「発信者情報開示請求権」を使います。要件事実は同条に記載されています。 一般に匿名サイトでは,投稿者を特定するため,2段階の請求が必要です。1段階目はサイト管理者に対するIPアドレス等の開示請求,2段階目は接続プロバイダに対する,投稿者の住所氏名の開示請求です。1段階目はメール,オンラインフォームでの開示請求も利用されていますが,2段階目は原則として裁判所での手続になります。発信者情報開示請求書という書面での開示請求も可能ですが,投稿者が開示に同意しない場合には,やはり裁判所での手続が必要になります。 近時,格安携帯電話の普及により,MVNE,MVNOという仕組みが利用されているケースもあり,第2段階目の発信者情報開示請求が数段階に分かれることもあります。たとえばKDDI→UQ→MVNE→MVNOのように,開示請求が4回必要となる場合もあります(➡)。 権利侵害が名誉毀損罪,業務妨害罪といった犯罪を構成するものであれば,刑事告訴も検討対象になります。ただ,最初から警察へ行くより,民事の手続でIPアドレスを開示した段階や,投稿者を特定できた段階で警察へ行く方が,スムーズに捜査してもらえる印象です。
元のページ ../index.html#31