2 記事の削除 〈示談交渉の相場〉493 損害賠償請求訴訟の被告側対応 発信者情報開示請求が認められ,投稿者の住所氏名が開示されたあとは,損害賠償請求での被請求者側対応,被告側対応となります。 主な防御ポイントは,①権利侵害の有無(➡4章),②損害額(➡),③調査費用を含めることの可否(➡)になります。⑴ 削除請求権はない⑵ 削除のお願いは可能⑶ 自分で削除できる 投稿者の立場でできること 対象者(被害者)が発信者情報開示請求をする前に,問題投稿を削除してしまおうと考える人もいます。しかし,判例法理による人格権侵害差止請求権としての削除請求権は,自分の人格権侵害を前提とするため,投稿者自身には行使できません。また,仮に行使するにしても,匿名サイトであれば,自分が投稿したことの立証は困難と考えられます。 これに対し,サイト管理者に対する削除の「お願い」は可能です。削除請求権がなくても,サイト管理者が削除を了承すれば,削除してもらえることがあります。 もっとも,弁護士が代理して上記の削除依頼(加害者側での削除請求)をすることは,他人の事件に関する証拠の削除として,刑事上の証拠隠滅罪に該当する可能性があるため避けるべきです。 X(Twitter)のように自分の管理下にある投稿や,削除機能のあるサイトであれば,自分で削除処理ができます。投稿者本人が実施する限り,証拠隠滅罪の問題は生じません。 投稿による慰謝料の判例相場は,平成20年代は100万円前後という認識でしたが(調査費用は別扱い),その後は低額化傾向にあります。もっとも,訴外の示談交渉では,投稿者側に何らかの考慮要素があるために,現在でも200〜500万円程度の和解額になることも珍しくありません。
元のページ ../index.html#37