リモート
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8519 労働安全衛生(労災)的な私的行為に当たる場合としては,例えば,業務時間内に子どもの世話をしていた際に怪我をした場合や,業務時間内に食事を作っていた際に怪我をした場合が考えられます。 なお,リモートワークの休憩時間中に,食事のため飲食店へ行く途中に事故に遭った場合には,事業主の管理下にはなく,業務時間外の事故なので事業主の支配下にもなく,業務災害には該当しないと考えられます。エ 自宅の設備が原因で災害が発生した場合 例えば,在宅勤務中,自宅の椅子に座り業務に従事していたところ,当該椅子が壊れ,転倒し怪我を負った場合のように,自宅の設備が原因で災害が発生した場合,業務災害に該当するのか問題となります。この点,業務中であることから,業務遂行性は認められるとしても,自宅で使用している椅子が壊れ,それが原因で怪我を負うということが,「労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあること」に伴う危険が現実化したものと経験則上認められる,すなわち業務起因性が認められる,とはいえないのではないかと考えられます。このような場合には,業務災害とは認められない場合もあります。オ リモートワークにおける業務災害の留意点 リモートワークにおける業務災害の留意点として,在宅勤務であれば,労災が起こった際に,目撃者がいない可能性が高いことから,立証の点で困難な場面があり,労災認定が難しい場合が想定されます。しかし,通常の職場であっても,目撃者がいないといったこともあり,リモートワークで目撃者がいないから労災認定は難しい,とは言い切れませんし,事故が起こった自宅の状況や怪我の状況など客観的な資料に基づき労災を認定することは決して難しいことではないと思われます。 また,リモートワークにおいては,業務と私的行為が混在するため,労災認定が難しいといった点も懸念されます。しかし,リモートワークであっても,始業時や終業時,休憩開始や休憩終了に当たり,労働者からメール等で報告させるよう労働時間管理を行うことで(本章Q9参照),業務時間を基に業務と私的行為とを区別することは難しくな

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