リモート
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1はしがき  社会が急速に変化している,そう感じる1年でした。もともと電子署名の根拠となる電子署名法は2001年には施行されており,リモートワークの動向と生産性の調査は,総務省により継続的に行われていました。もっとも,出社し,デスクに座り,会議に出席し,ハンコを押す日本の企業文化において,電子署名はそれほど普及せず,リモートワークを採用する企業は少数であった認識です。しかし,コロナ禍という非常事態が起こり,日本の,いや,おそらく世界の働き方は劇的に変化しました。 日本においては2020年の4月に緊急事態宣言が発令され,多くの企業はリモートワークを採用しました。当初は,コミュニケーションや業務効率の問題など,うまくいくかどうか不安視されていたリモートワークでしたが,1年を経て,多くの人の予想以上に社会になじんだように思われます。現在では,都市部の会社に所属しながら,地方に居を構え,余暇時間に農業をする,サーフィンをする,近くの温泉に行くなど,生活を充実させている人も見受けられます。今までと異なる生活を楽しみ始める人も増えてきているようです。働き方改革にとって,リモートワークの普及は大きな意味を持つものとなってきているように思います。 その一方で,勤怠管理の問題,セキュリティの問題,バーチャル株主総会への対応など,様々な法的問題が生じていることも事実です。また,リモートワークが普及してきたとはいえ,東京の朝の通勤電車は変わらず混雑しています。現在は一言で言うと,新しい生活,ワークスタイルへの「過渡期」にある,そう感じています。 本書では,法律事務所やインハウス(企業内)において第一線で活躍する弁護士が集まり,自身が感じている問題意識を背景に,様々な角度から過渡期におけるリモートワークの問題点と解決策を熱筆しました。編集会議はリモートで行い,議論は数時間に及ぶこともありました。これから社会が変化していくに伴い,本書が前提とした法制度も当然変化していくと思われますが,現時点においては最新の議論が掲載された書籍になったと自負しています。はしがき

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