166業における長期的な貢献の相違ですが,勤続の長短の相違自体は本来相対的・副次的な問題です(有期雇用労働者でも有期雇用契約の更新を繰り返せば長期雇用労働者になりますし,短期の勤続の有期雇用労働者であってもその入替えがあれば,結果として長期の勤続となります。)。より本質的な相違は,無期雇用労働者に対してはその勤続とともに,技能を向上させ,対応可能な職務を広げることが期待されているという,いわば提供する労務の質的向上の有無にあります(率直なところ,必ずしも無期雇用労働者の中にはこの期待や想定に応えることのない問題社員が存在し,それが待遇の相違についての有期雇用労働者側の不公平感を増加させている例も多々見られるのが現実です。)。換言すれば,その相違が無期雇用労働者と有期雇用労働者との間に存在しないような場合には,その両者間の待遇差の説明は,たとえ,基本給,賞与,退職金といった項目においても難しくなるでしょう。相違がある場合には,その相違の内容及び相違が生ずる要因の一部(例えば,質的向上を図るべくどの程度の地域的,職域的な幅の業務を想定し実際に実施されているのか等)と各種手当の目的とが符合するのであれば,待遇差の説明も可能となってくるでしょう。(2) 賃金面以外 有期雇用労働者と無期雇用労働者の待遇差には,休暇(夏期休暇,年末年始休暇),休職(病気休暇を含む),福利厚生措置(慶弔見舞金・休暇等)といった,賃金面以外のものも見られます。これらの待遇差は,従業員の定着を目的として設けられていることが多いでしょう。しかし,その付与の基準及びそこから窺われる目的からすれば,勤続の長さというよりも社会一般の通念(例えば夏期休暇のように,お盆に帰省,仏事のために休暇を付与する,暑さによる疲労蓄積を防ぐ等)によっている場合も多くあります。必ずしも,パート・有期法8条でいうところの「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的」とは機械的に理解できる場合ばかりではありません。
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