313 同一労働同一賃金の原則(パート・有期法8条等)への対応に関する書籍は,すでに複数出版されていますが,本書の特徴は,同一労働同一賃金の原則への対応の中でも,通常の労働者(主として正社員)と短時間・有期雇用労働者との間に労働条件の差異がある場合の,その待遇差に関する労働者に対する説明義務(パート・有期法14条)にフォーカスしているということです。 このパート・有期法14条の待遇差に関する説明義務は,その違反に対しては行政指導や企業名公表の対象にもなり得るものですが,同一労働同一賃金の原則に関する類書においては,何を具体的にどの程度説明すればよいのかという点についてはあまり議論の対象とはされていませんでした。 もっとも,執筆していて感じたこととして,説明義務を履行するためには,自社の賃金制度(手当の法的性質・支給目的等)について理解しておくこと,また,関連法令・通達等の理解は当然のこととして,裁判例において各種手当等についてどのような判断がなされているのか,という点の理解はいずれにしても必須となるということです。 ただ,そういった理解が当然とはなりますが,パート・有期法14条との関係で,労働者に対してどの程度の説明が求められているのかという部分については,法令・通達等において抽象的には示されているものの,個別具体的な事例において実際に説明義務の履行として十分か否かについてはあまり具体的に論じられていないのが実状です。 そこで,本書としては,企業の人事労務担当者が説明義務の問題で迷った時に,一定の解決基準を提示できるように,可能な限り説明義務の内容等について具体的な解説を心がけましたが,執筆時に執筆陣が一番苦労したのも,この「具体的にどのように,どこまで説明すればよいのか」という部分であり,執筆陣で複数回の会議等において協議を重ねるなかで,なんとか一定の結論に達したというのが偽らざる本音です。 このように,前例が非常に乏しい問題であり難しい面はあるものの,執筆陣が非常に悩みながら協議を重ねて執筆した本書については,必ずや長く読あ と が き
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