2第1章 総 論ければなりません。探索の結果,土地の所有者が判明することもありますが,判明に至るまでの負担は小さくないと指摘されています(部会資料1・2頁参照)。 これらは,相続登記や住所変更登記等が行われず,不動産登記情報が適時適切に更新されないことによって生じる問題です。言い換えれば,改正前の不動産登記法には,不動産登記における情報の完全性を担保する仕組みが設けられていなかったということであり,これは主に不動産登記法の問題であるということができます。⑵ 所有者不明土地の利用・管理の支障――民法の問題 所有者不明土地は,土地の利用や管理の観点からも問題があります。 例えば,共有者の一部が不明である所有者不明土地では,他の共有者がその土地を利用しようとしても,不明となっている共有者の同意を得ることができないために,その利用が制限されることがあります。 また,ライフラインの敷設等のために隣地を利用する必要が生じても,その隣地が所有者不明土地である場合,所有者の同意を得ることができず,ライフラインの敷設に支障が生ずることがあります。 これらは,私人間の利害を適切に調整するための民法が適切に機能しておらず,一方に過度な負担や制約を課している状態であるといえ,これは主に民法の問題であるということができます。2 民法・不動産登記法等の改正 以上を踏まえ,令和3年の通常国会において,相続登記の義務化や共有制度の見直しをはじめとする民法・不動産登記法等の改正が行われました。
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