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◆コラム◆202第2章 改正法の要点解説 改正法の規律の下で,父が死亡したものの,母の存命中はあえて遺産分割を実施せず,母が死亡した後にまとめて遺産分割を実施しようと考え,相続人間で父の死亡から10年経過しても具体的相続分による分割を行うことができるという合意をすることはできるでしょうか。これは,改正後民法904条の3が強行法規か否かを問う論点ともいえます。 この点については,当該合意が⑴期間経過「前」になされたものであるか,⑵期間経過「後」になされたものであるかに分けて考える必要があります(以下の説明につき,部会資料42・8頁参照)。結論としては,以下のとおり,時効利益の放棄の考え方と同じような整理になります。1.期間経過「前」になされた合意――無効の可能性 将来行う遺産分割は具体的相続分により行うという合意を相続開始から10年が経過する「前」に行ったとしても,当該合意は法的に無効になる可能性があります。これを認めると,遺産共有の状態を長期にわたり継続することが可能になり,具体的相続分による分割に期間制限を設け,遺産分割を促進しようとした法の趣旨が没却されるためです。2.期間経過「後」になされた合意――有効 相続開始後10年が経過した「後」に遺産分割の申立てがされ,その遺産分割手続の中で,当事者が具体的相続分による遺産分割を実施するとの合意をすれば,裁判所は,その合意に沿って遺産分割をすることになると解されます。遺産分割手続では,職権探知主義がとられているものの,そもそも,遺産分割は相続人間の合意によってすることができる性質のものだからです。制限期間を伸長する合意の可否(改正後民法904条の3の強行法規性)

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