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1 「所有者不明土地問題はお金にならない」 所有者不明土地問題はお金にならない――とある大御所弁護士の言葉を聞き,なるほど確かにそのとおりだと妙に納得した覚えがあります。 相続登記が行われず,所有者が不明化するのは,その土地に価値がないからです(いわゆる負動産化)。負動産の所有者に,弁護士や司法書士等に高い報酬を支払って,管理を行うメリットはありません。我々法律実務家も,そのような負動産に関する案件で高額の報酬をいただくことは難しいといえます。そのような背景もあってか,現状,所有者不明土地問題は法律実務家にとってマイナーな分野という印象です。 しかし,その結果,「弁護士や司法書士に頼むとお金が掛かるから」「相続登記は義務ではないから」「実害がないから」と言って「とりあえずこのままにしよう」という個人レベルの合理的な行動を生み,国家レベルの不合理(問題の拡大と先送り)を招いたのではないかと感じます。 上述の発言は,問題の本質を突く指摘であると同時に,翻って「法律実務家は,この問題の解決にどのように取り組むのか?」という難しい問いを投げかけられたと感じました(なお,この点の著者なりの考えはあとがきをご参照ください。)。2 今回の改正は実務に影響があるのか?⑴ 所有者不明土地問題以外への影響 所有者不明土地問題が実務家にとってお金にならないマイナーな分野だとすれば,所有者不明土地問題に端を発する今回の改正が実務に与える影響は小さいと考えてよいでしょうか。 立法担当者である大谷太法務省民事局参事官は,本年1月の論考で「法制審部会において検討されている諸制度は,所有者不明土地への直接的なiiiはしがき所有者不明土地問題が専門ではない実務家のための解説書をはしがき

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