はしがき対策に限らず,民法の相隣関係規定,共有制度,財産管理制度,相続制度といった幅広い分野にわたるものである。」と述べています(大谷太「民法(所有者不明土地関係)をめぐる動向」NBL1185号29頁)。 すなわち,今回の改正は所有者不明土地のみに適用される規律だけでなく,所有者不明の建物,動産その他の財産権にも適用される規律があります。また,所有者が不明ではない通常のケースにも適用される規律があり,その中には不動産のみに適用される規律もあれば,不動産以外にも広く適用される規律もあります。まとめると次のとおりです。 例えば,今回の改正により相続開始から10年が経過すると,基本的に寄与分や特別受益に基づく遺産分割ができなくなりますが,これは相続全般に適用される規律で,弁護士がこの点を見落とすと,弁護過誤とされる可能性も否定できません。 このように今回の改正は,所有者不明土地問題以外の分野にも影響を与え得る改正といえます。⑵ 所有者不明土地問題への影響 他方で,今回の改正は所有者不明土地問題の解決にとって間違いなく大きな前進になると考えられます。私は,法制審議会の委員幹事の先生方や法務省その他の関係省庁の担当官の方々が改正に尽力されたその一端を拝見しましたが,先般の債権法・相続法の改正に劣らない今回の大改正が短い期間で取りまとめられ,実現したのは,今回の改正に関与した方々の能力・人間性のいずれもが当代一流の水準にあったからだと確信しています設所有者不明の場合のみに適用・所有者不明土地管理制度等の創不動産のみに適用・所在等不明共有者からの持分取得制度等の創設不動産以外にも適用・不在者財産管理制度等の見直し・共有物の変更・管理に関する非訟手続の創設(一部除く)iv(所有者判明の場合)にも適用・相隣関係の見直し(土地のみ)・管理不全土地管理制度等の創設・不動産登記法の見直し・相続土地国庫帰属制度の創設(土地のみ)・共有制度の見直し(一部除く)・相続制度の見直し通常の場合
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