vはしがき(例えば,大谷太「雑務考」民事月報70巻6号3頁以下では,立法担当者である大谷太参事官の緻密なお仕事ぶりと部下思いの優しいお人柄を拝見することができます。)。 もっとも,実務の現場で問題に直面してきた私としては,不十分だと感じる点もあります。例えば,所有者不明土地問題における困難事例の一つとして挙げられる相続人や共有者が多数の土地に関して,今回の改正では決め手となる対策がありません。3 今回の改正の特徴⑴ 社会問題の解決のために民事基本法制を改正 それでは,なぜ他分野への影響が懸念され,また,所有者不明土地問題の解決にも不十分な点が残ってしまったのでしょうか。これは,今回の改正が,特定の社会問題に対応するために,社会一般に広く通用する民事基本法制を改正するという対応をとったためだと考えられます。 通常,社会問題に対する法制上の対策は公法による的を絞った対応が一般的です。例えば,空き家問題に関しては空き家対策特別措置法が制定されていますが,そこでは,厳格に定義された「空家等」「特定空家等」に絞った措置が講じられています。⑵ 所有者不明土地問題をきっかけとした民法改正 他方で,今回の改正は,法務省が所管する民事基本法制(その中でも根幹をなす民法・不動産登記法等)の改正です。しかも,今回の改正は,民法の中に,「所有者不明土地」等の定義を設け,そこに当てはまる土地だけを射程に置いた特則を設けるという改正ではありません。建物にも適用される規律,所有者が不明でない場合でも適用される規律,物一般や相続一般に広く適用される規律等があります。これらを見ると,今回の改正は,“所有者不明土地問題を解決するための改正”という側面だけではなく,“所有者不明土地問題をきっかけとした改正”という側面があることがわかります。⑶ 債権法改正との違い――形式より実質 さらに,今回の改正は先般の債権法改正のような判例法理の明文化やわかりやすい民法という観点からの形式的な改正はあまりありません。所有
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