4持つ父母に対する取組が行われてきた。親ガイダンスの取組は,離婚をめぐる紛争の最終ステージである裁判離婚において,有責主義的離婚原因が残されている上,有責配偶者からの離婚請求は原則として否定されるなど,子の父母が,離婚原因や有責性について対立し,互いに非難を繰り返し,子どものために協力し合うという思いを持ちづらくなってしまう事態を,裁判離婚に前置される調停手続段階で改善しようとする試みである。 すなわち,家事調停は,離婚をめぐる法的な紛争の司法的解決の最初の場であるから,親ガイダンスの取組によって,父母間の争いが熾烈化する前に,父母の感情的対立を和らげ,夫婦の争いから子どもの視点への転換,建設的な協調関係へと誘導したい。そして,調停において,可能な限り当事者の紛争解決能力と意欲を引き出し,当事者の納得に基づく主体的解決を図ることが,養育費の支払を確実にし,面会交流等の任意履行率を高め,結果としてその後の安定的な親子関係の維持にもつながる。 本章の執筆を,札幌家裁の家事部で全体を総括する立場にある知野明裁判官にお願いしたところ,札幌家裁における親ガイダンス(子どもを考えるプログラム)立上げの中心的メンバーであった藤田奈緒子主任家裁調査官とともに共同で執筆してくれた。札幌家裁における親ガイダンスの特徴としての,子プロⅠ型と子プロⅡ型という実践が紹介されるとともに,カスタマイズ型の親ガイダンスの効果的な活用にも視野を広げた意欲的な論稿となっている。第5章 家事事件手続法施行後の面会交流調停事件の運営及び新たな運営 現在,家事調停事件の中で,当事者間で最も厳しく争われ,調整が困難な事件が,面会交流事件である。その面会交流調停事件について,従来家裁が堅持してきた考え方を確認するとともに,新たな運営モデルを提案したのが,東京家裁面会交流PTによる「東京家庭裁判所における面会交流調停事件の運営方針の確認及び新たな運営モデルについて」(家判26号129頁以下(2020年))である。 本稿は,前記の新たな運営モデルについて,その策定チームのキャップモデルについて序 本書の編成と各章の紹介
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