裁実理
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5として関与し,かつ,最前線で多くの面会交流事件を担当している細矢郁裁判官が,その要点を分かりやすく解説した上で,初回期日の重要性,高葛藤事案についての対応等について実践的なコメントをしたものである。面会交流事件に携わる方々に対し,子の利益の確保のために何が必要とされるのか,その実現に向けてどのような実践を検討すべきかを訴えかける珠玉の論稿である。第6章  面会交流と要件事実論〜非訟事件性(後見性),職権主義との理論 司法制度改革によって各地に法科大学院ができ,法律学と裁判実務との架橋が叫ばれるようになり,その中で,民事事件における要件事実論が家事事件にも妥当するかが議論されるようになった。しかし,家事事件手続法は,従前から家事事件において支配的であった職権主義の構造を堅持したのであり,当事者主義が支配する民事訴訟法手続において発展した要件事実論を,部分的にせよ家事事件に適用することには,疑問も呈されていた。 本稿は,優れた実務家であり理論家でもある下馬場直志裁判官が,面会交流事件について要件事実論を取り入れて論じることの是非について,面会交流事件の非訟事件性(後見性),職権主義との理論的整合性の観点からその問題性を鋭く指摘するとともに,面会交流の実現のためには,面会交流の履行可能性への配慮が必要であることについても論及したものである。第7章 監護者の指定について〜「子の利益」再考察 子の監護事件のうち,子の監護者指定や子の引渡しが問題となる事件における指定基準(考慮要素)については,従来,母性優先の原則,監護の継続性,主たる監護者,面会交流についての寛容性,子の意思,きょうだい不分離等,様々な要素が議論されてきた。しかし,これらの考慮要素が,具体的にどのように考慮されるのかなどの問題について,突っ込んだ分析がされた文献は多くなかったように思われる。 中山直子裁判官は,家事実務に精通した裁判官であり,これまでにも子の監護者指定・引渡しに関する論文を発表している。本稿は,指定基準的整合性等の観点から序 本書の編成と各章の紹介

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