8第12章 令和元年改正法に基づく特別養子縁組の審判事件 令和元年度の民法等の改正法に基づき,特別養子制度について,従来6歳未満の子が対象であった点が改正され,原則として申立て時に15歳未満に,例外的に,15歳になる前から養親候補者が引き続いて養育している事案では18歳までは縁組が可能となり(養子となる子の上限年齢の引上げ),令和2年4月から施行された。 この令和元年改正法によって初めて対象となり得ることになった17歳の子を対象とする特別養子縁組について,対象外となる18歳になる直前の,令和2年6月に東京家裁で成立の審判が出されたとの新聞報道がされた。新聞報道によると,対象となった子は,5歳で施設から里親夫婦に引き取られ,育てられてきた,実親はシングルマザーで,精神的な病気で育てられる状態になかったとのことである(令和2年7月20日東京新聞)。法律上の親子関係が続けば,実親やその親族の借金の相続や扶養に関して子に連絡が来る可能性があるのだが,特別養子縁組によって,そうした将来の不安から解放され,安定した人生を送れる子もいると報じられており(同月24日東京新聞),今後の実務の動きが注目されている。 本章は,東京家裁の今井弘晃裁判官に執筆をお願いした。年齢制限に関して実務上最も問題となると思われる「やむを得ない事由」の解釈について,立法段階での議論を前提とした上での私見が示されるとともに,実務運用に注目が集まっている,特別養子適格の確認審判及び特別養子縁組の成立審判という二段階手続についても,実務上の留意点も含めた解説がされている。第13章 ハーグ条約実施法における子の返還申立事件の運用の実際〜施行後7年間の経験を踏まえて序 本書の編成と各章の紹介 ハーグ条約実施法は,平成26年4月から我が国との関係で効力を発し,東京家裁と大阪家裁が子の返還申立事件の第一審裁判所として,多数の事件を担当してきた。本稿は,ハーグ条約実施法に基づく事件の運用の制度設計にも携わった経験を持ち,現在も東京家裁で子の返還事件を担当している村井壯太郎裁判官が,その審理モデルの具体的な実践とともに,子の
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