第1章 家事事件手続法の立法による調停の基本構造への波及3451)秋武32頁52)前掲注26)25頁〔大島眞一発言〕53)本多・前掲注27)29頁54)本多・前掲注27)61頁日における双方の言い分や主張についての合意点を説明し,次回までに双方が検討しておくべきこと(課題)を,調停委員会と当事者が共有することも重要であり,各地の裁判所で「振り返り」「終わりの会」などと称されて実施されている。51)52)調停期日を終えようとする際に,当事者にその期日で行われたことを振り返ってもらうとともに,次回期日までの課題を相互に確認し,当事者の責任を涵養させることは,極めて有益なことである。このような様々な工夫をしながら,当事者や手続代理人の理解を得て,実施できる事件の範囲を広げ,運用の安定化を目指していくべきであろう。⑷ 将来の調停のあるべき姿を目指して 以上のような様々な取組は,息長く進める必要がある。家事事件手続法の施行に当たり,東京家裁では,分かりやすく公正な手続を通じて,当事者と裁判所が手続進行や話合いの内容に関する重要な情報を共有し,問題状況を正しく認識した上で,当事者が主体的に手続活動を行うことができることを目指した。53)家事事件手続法施行前からこのような取組を,限定的にでも実施していた庁(係)は別としても,家事事件手続法施行を機に一気にこれを開始しようとしても,関係者の理解を得づらい状況があったようである。当事者にその責任と向き合う姿勢を持ってもらうためにも,家事事件手続法の理念である当事者に対する手続保障・手続の透明性を確保し,当事者の家事調停や調停委員会に対する警戒心や不安感を解き,安心して調停期日に臨むことができるような信頼関係の土台を作ることが必要である。54) 関係者においては,その趣旨を汲み取っていただき,将来の調停のあるべき姿を見通して,地道に取組を進める必要があると考えている。
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