第2章1 はじめに351 はじめに 家事事件手続法の家事審判法からの見直しの最大の要点は,当事者の手続保障を図る制度の拡充である。その一環として,家事事件手続法は,記録の閲覧謄写(以下「閲覧等」という。)が当事者への手続保障の根幹であるとの理解を前提に,家事審判において,当事者の記録の閲覧等を原則として認めた(家事法47条。以下,閲覧等を認めることを開示と表現することがある。)。また,別表第2審判事件について,家庭裁判所は,当事者の閲覧等の機会を保障するため,事実の調査をしたときは,その通知をすべきとした(家事法70条。なお,審判一般については家事法63条)。家裁調査官が作成する調査報告書も事実の調査の結果であるから,家事事件手続法下では,家事審判において,調査報告書が当事者に原則的に開示されることとなった。 他方,家事事件手続法は,家事調停については,それが話合いのための手続であることを重視し,記録の閲覧等は,当事者についても裁判所が「相当と認めるとき」(家事法254条3項)に限って許可することができるとした(合意に相当する審判事件(家事法277条)は家事審判と同じ)。したがって,法律上は,家事調停において,調査報告書は,当事者に開示される必要はない。しかし,現実の運用では,家事調停においても,調査報告書が当事者に積極的に開示され,その合意形成に寄与している。 かつて,家事審判法下においては,家事調停及び家事審判のいずれについても,法的には,調査報告書は,当事者に対しても開示の必要はないと水 野 有 子家庭裁判所調査官の調査報告書の 開示と調停手続
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