裁実理
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第3章1 はじめに591 はじめに1)逐条解説859頁 家庭裁判所は,調停が成立しない場合において相当と認めるときは,当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情を考慮して,職権で,事件の解決に必要な審判(調停に代わる審判)をすることができる(家事事件手続法284条)。 この調停に代わる審判は,調停での話合いを行っても合意に至らない場合に,直ちに調停不成立として終了させてしまうのではなく,家庭裁判所が一切の事情を考慮して,当事者の異議の申立てがなければその内容どおりの効力を生ずることを前提として解決案の提示としてする審判であり,法文自体に「事件の解決に必要な審判」であることが明示されている。 家事調停は,当事者の生活に密接に関わる家庭での問題や紛争を取り扱うものであると同時に,今後の人生,将来を見据えた手続であることから,当事者双方が話合いで納得の上,合意するのが紛争解決に当たって望ましいと考えられる。しかしながら,調停手続において,当事者の一方に手続追行の意思が欠けていたり,当事者双方のわずかな意見の相違や感情的な対立から合意に至らないのはよくあることである。このような場合に,裁判所がそれまでの経過や収集した資料に基づき合理的な解決案を提示して,紛争解決を図るものとして調停に代わる審判が広く活用されており,紛争の円満解決のための選択肢を増やすものとして有用であると考えられている。1)那 波 郁 香実践・調停に代わる審判

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