第4章1 はじめに791 はじめに 父母は,協議上の離婚をするとき,子の利益を最も優先して考慮し,子の監護者,面会交流,養育費等の子の監護に関する事項について必要な事項を定める必要があり(民法766条1項),家庭裁判所における審判,調停等においても,家庭裁判所調査官(以下「家裁調査官」という。)による調査等により,未成年者である子の意思を把握するなどして,子の利益に最大限配慮した運営が実現できるよう努めている(家事法65条,258条1項)。ところが,離婚が問題となっている夫婦間においては,子の監護に関する事項のみならず,離婚原因の有無,その責任の所在,別居期間中の婚姻費用の分担,財産分与,慰謝料請求の可否,年金分割等,多岐にわたる事項について意見が対立し,子の利益に考えが及ばないばかりか,むしろ子の監護に関する事項を勝ち負けの対象としたり,離婚条件の交渉に利用しようとしたりするなど,子の福祉を害しかねない事態が生じることが少なくない。このような状況の下,離婚等に関する調停が家庭裁判所に係属した場合,父母の対立はますますエスカレートし,父母が調停委員会や家裁調査官から行われる種々の働き掛けに耳を傾け,子の利益について主体的に考えるようになることは容易でない。 こうした事態について,米国等では,相当以前から,父母に対する教育的なプログラムが導入され,一定の成果を上げているところ,このような知 野 明藤 田 奈緒子札幌家裁における親ガイダンス (子どもを考えるプログラム)について
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