「子どもの脳を傷つける親たち」友田明美(NHK出版,2017年) 著者は,小児科医師で,2017年4月からは日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表者でもある。本書で著者は,マスコミで報道されるような子どもに対する虐待事例ばかりでなく,威嚇,罵倒,無視,子どもの前で繰り広げられる激しい夫婦げんかなどによっても,子どもの脳は確実に傷つき,成長過程の脳は変形する可能性があることを指摘し,大人から子どもへの不適切な関り方を「マルトリートメント」と呼ぶ。 その上で,これまで人間の脳(神経神胞)は,幼少期にほぼ固まり,かつ遺伝子的に決まっていると考えられていたが,脳科学による実証研究により,子どもの脳は,マルトリートメントを受けることで変形すること,そして,マルトリートメントの内容(種類)によって,脳の変形する場所が異なることまでをも解き明かしている。 著者は,子どもの脳は,大人が想像している以上に柔らかく,傷つきやすい,いちばん身近で安全な場所であるはずの親から「攻撃」を受けると,取り分け深いダメージを受けてしまうとして,医師として,科学者として,そして一人の親として,社会全体に対し,親子の問題に取り組んでいく必要性を訴えかけている。ライブラリー「子どもの脳を傷つける親たち」100ライブラリー
元のページ ../index.html#48