第7章1 はじめに1431 はじめに1)島津一郎・松川正毅編『基本法コンメンタール親族[第5版]』(日本評論社,2008年)76頁〔許末恵〕2)「注解家審」352頁〔沼邊愛一〕3)島津一郎編『注釈民法』(有斐閣,1966年)158頁〔神谷笑子〕,野田愛子「子の監護に関する処分の基準について」『家族法実務研究』(判例タイムズ社,1988年)177頁,清水節『判例先例親族法Ⅲ─親権─』(日本加除出版,2000年)96頁,中山直子「子の引渡しの判断基準」判タ1100号182頁(2002年),若林昌子「親権者・監護者の判断基準と子の意見表明権」野田愛子・梶村太市総編集『新家族法実務大系第2巻』(新日本法規出版,2008年)388頁⑴ 実務における監護者の指定 日本の民法は,未成年の子は,婚姻中は父母の共同親権のもとで監護養育される(民法818条3項)が,父母が離婚する場合は,民法819条により,単独親権者の下で監護養育され(同法819条1項),父母のうちの一方を親権者として選択することになる。子の親権者指定は,離婚時の問題であるが,父母が不和となり別居となる時点から,どちらが監護すべきかが争われることになる。民法766条は,沿革的には,離婚後親権者が父とされていた旧民法において,親権者とは別に乳幼児の母を監護者と定めるための規定(旧民法812条)であった1)が,別居後の父母間の監護をめぐる紛争についても民法766条が類推適用されると解するのが通説である。2)監護者指定の際には,明文の規定が定められる前から「子の利益」(子の福祉)を第一に優先して判断することについて異論はなく,3)平成23年5月の法改正により,民法766条1項に「子の監護すべき者」を定める際には,「子の利益」を最中 山 直 子監護者の指定について ~「子の利益」再考察
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