裁実理
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第10章1 はじめに2051 はじめに 平成30年7月6日に成立した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)は,相続法の分野において多岐にわたる改正事項を含むものであった(以下,本稿においては,同法により改正された民法を指して「改正法」という。)。遺産分割制度,遺言制度や遺留分制度など既存の制度についても大幅な見直しがなされたほか,これまでにない新たな制度が設けられるものでもあった。その中の一つが,「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」として新設された,「特別の寄与」の制度(以下,寄与分の要件である「特別の寄与」と区別するため,民法1050条の「特別の寄与」の制度を指して「特別寄与料制度」という。)である。 特別寄与料制度は,改正前から存在していた寄与分(民法904条の2)の制度に類似するものではあるが,新設されたこの制度と寄与分の制度との関係は,検討を要する事項を含むものと思われる。また,特別寄与料制度固有の実務上の問題点もあると思われる。そこで,その一部について,同制度の新設後その運用に携わる者として若干の検討を行いたいと考え,本稿の執筆に至った次第である。 本稿では,まず,特別寄与料制度の概要を確認し(後記2),次に,寄与分との関係で従来の実務において採用されていた履行補助者論に対する改正法の影響とともに療養看護型寄与についての特別寄与料の要件解釈(療養看護型寄与分における要件との異同)について検討することとし(後記3),加えて,家庭裁判所で審理を行う際に問題となる管轄についても若干の検討伊 藤 健太郎特別寄与料に関する実務上の諸問題

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