裁実理
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「わかれ縁えにし」西條奈加(文藝春秋,2020年) 作者は,主に時代小説を手掛け,2021年1月に「心うら淋さびし川」で直木賞を受賞。「わかれ縁えにし」は,その受賞以前の発表作。 江戸時代の公く事じ宿やど(訴訟のために提出する書類や手続を代行する業者)を舞台に,女を食い物にして手放そうとしない男と,男から何とか三みく行だり半はんを書いてもらわなければならないと奮闘する女を描いた歴史小説。主人公絵乃は,18歳のとき,2歳年上の富次郎と夫婦になったが,富次郎は女癖の悪さと借金で絵乃を苦しめ続ける。絵乃が,ふとしたことから公事宿の手代と知り合ったところから,物語は展開して行く。夫婦や親子,織りなす人間模様,江戸の情緒が丹念に描かれ,エンターテイメント性にもあふれる。 家事実務に携わっている方,歴史に興味のある方にも,面白く読んでいただける小説と思われる。ライブラリー「わかれ縁」246ライブラリー

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