裁実理
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第13章1 はじめに2691 はじめに1)なお,東京家裁では,実施法の施行に合わせ,後見等関係事件,財産管理事件及び遺産分割事件を除く渉外家事事件を集中的に担当する係が設けられ,子の返還申立事件以外の渉外家事事件についての経験の蓄積がされている。子の返還申立事件及び子の返還の執行事件は,この係において渉外家事事件を担当している裁判官を含む合議体で審理されている。 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(以下「条約」という。)は,平成26年4月1日に我が国との関係で効力を発し,同日から,条約の国内実施法である「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する法律」(以下「実施法」という。)が施行されるとともに,裁判手続の細目について定める「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律による子の返還に関する事件の手続等に関する規則」(以下「実施規則」という。)が施行されて令和3年4月で7年が経過した。 東京家裁は,実施法32条において,大阪家裁と共に,子の返還申立事件の第一審を集中して管轄する裁判所とされており,実施法施行前から,関係各所と協議を重ね,迅速かつ適正な審理の実現に向けての審理モデルを構築し,実施法施行後はその審理モデルに沿った運用を重ねてきた。1) 本稿では,まず,子の返還申立事件について概観(2 子の返還申立事件について)した上で,子の返還申立事件の審理モデルを説明(3 子の返還申立事件の審理モデル(6週間モデル))する。また,子の返還申立事件における村 井 壯太郎ハーグ条約実施法における子の 返還申立事件の運用の実際─施行後7年間の経験を踏まえて─

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