裁実理
67/80

第14章1 家事抗告事件の事件動向3071 家事抗告事件の事件動向1)「家庭裁判所60年の概観」家庭裁判資料191号127頁(2010年)参照⑴ 概 要 家庭裁判所が家事事件手続法(以下「家事法」という。)39条に限定列挙された事項について,申立て又は職権により開始された家事審判事件において,終局的な裁判としてされるものを家事審判という。この家事審判に対する不服申立てには,即時抗告,特別抗告,許可抗告があるが,このうち最高裁判所が審理する特別抗告,許可抗告を除いて,即時抗告を一般に家事抗告といい,その審理を家事抗告審という。家事事件手続については,家事法の整備により,当事者・関係人の手続保障が図られたが,家事抗告審の手続も同様である。本稿では,家事抗告事件の事件動向,家事法による手続整備,高等裁判所での審理の実情について説明したい。⑵ 事件動向 ア 家事抗告の件数は,昔は極めて少なく,過去の統計をみると,昭和27年から昭和54年までの新受件数は,毎年100件強から200件強程度の数しかなかった。しかし,その後,家事審判事件全体の数が増加していることに伴い,家事抗告事件も徐々に増加し続け,平成12年に1,000件を超え,平成19年には2,000件を超えた。1)その後も増加傾向は続き,最近の数年間は次の統計のとおり,ほぼ高止まりの状態にある。家事事件増加の原因については,国民の権利意識の向上,家族像の変化,家族や親族の紛争解決機松 谷 佳 樹家事抗告審の審理の実情

元のページ  ../index.html#67

このブックを見る