裁実理
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第15章1 はじめに3271 はじめに1)例えば,マックス・テグマーク「AIで人類はレジリエントになれる」『コロナ後の世界』(文藝春秋,2020年)49頁以下 令和2年,新型コロナウイルスの感染拡大は全世界に広がった。パンデミックである。日本もその例外ではなく,3月初旬には全国小中高校が休校となり,筆者の勤務地である神奈川県では,4月初旬に緊急事態宣言が出され,同宣言は5月下旬まで続いた。夏に予定されていた東京オリンピックも延期となり,本稿を執筆している10月上旬,いまだ感染拡大第2波の中にあると思われ,冬には第3波が来るという予測もある。 新型コロナウイルスの感染拡大は,家庭裁判所の業務にも大きな影響を与えた。緊急事態宣言中,横浜家裁を含む多くの裁判所では,要急事案を除き,訴訟,調停,審判等の期日を取り消した。緊急事態宣言が解除された後,6月からは,既指定の期日を実施しつつ,取消期日の再指定作業を行い,7,8月も夏期休廷期間を設けずに業務を行った。その結果,通常の事件処理状況に戻りつつある部署もあるが,家事調停・審判を担当する部署など苦戦している部署も残る。 本稿で取り上げる家事調停に関し,今回の新型コロナウイルスの感染拡大は,次のような課題に気づかせ,これへの取組を迫った。 その一つは,感染症に対する対応力の問題であり,最近比較的よく目にする言葉を使えば,レジリエンス(resilience)の問題である。1)レジリエンスとは,逆境や困難などから立ち直る力のことであるが家裁調査官による調廣 谷 章 雄新型コロナ禍の下で考える家事調停

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