裁実理
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4 最後に第15章 新型コロナ禍の下で考える家事調停34224)最高裁判所事務総局・前掲注16)137頁25)財産分与の審理・判断に関するいわゆる「バランス方式」も含め,松谷佳樹「財産分与事件の審理の実情と課題」法の支配191号51頁以下(2018年),大門匡・木納敏和「離婚訴訟における財産分与の審理・判断の在り方について(提言)」家判10号6頁以下参照。横浜家裁において,バランス方式は,人事訴訟の和解勧試の場面で活用されることが多い。進めてきたところであり,これらは調停実務に溶け込んでいるように思う。 ところで,人事訴訟の審理の長期化の原因の一つとして付帯処分の申立に係る財産分与の審理(人事訴訟法32条1項参照)の長期化が指摘されており,24)人事訴訟担当裁判官からは,調停段階で財産分与についての議論を積極的に行ってほしいとの要望がある。離婚自体を争っている事案でそれを行うことは必ずしも容易ではないが,離婚調停における財産分与一覧表の活用は進んできており,離婚自体を争っているものの,本心は条件次第であるような事案については,右の一覧表を埋める作業をする中で,財産分与についての交渉が進むことはあると思う。 人事訴訟における財産分与の審理・判断についての工夫や改善に向けた取組も進められているが,離婚調停の機能強化の問題も,これと併せて取り組むことが望まれる。25) 新型コロナウイルス感染症の拡大は,家事調停について,これまでの実務の蓄積を活かしつつ,レジリエントで,より効果的な運用に向けて取り組むことを迫っている。家庭裁判所は,この機会を逃さず,当事者の協力も得ながら,家事紛争の早期解決に向けた運用も含めて,時代の要請に応える家事調停手続を目指す必要があると思われる。

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