裁実理
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第16章1 はじめに3431 はじめに 令和2年から猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症は,同年4月の緊急事態宣言,同年5月の同宣言解除後にも簡単には収まらず,冬期に至って第3波も引き起こし,医療関係者の努力はあるものの,その終息はなかなか見通せない状況である。 こうした状況において,東京家裁においてもコロナ対策を取った上,調停を始めとして,審判,人事訴訟の手続を行ってきている。例えば,調停においては,顔を突き合わせて話を聞くため,調停室は,もともとそれほど広くないものであったが,そこに関係者が多く入室して調停を行うとすると,何らの対策もしなければ密閉・密集・密接のいわゆる3密になることは避けられない。この状況については,同年2月頃から,当事者(代理人。以下,合わせて「当事者等」という。)のみならず,調停委員からも懸念が示されていたところ,調停室において,常時換気(機械換気)と全入室者のマスク着用を前提としながら,ビニールカーテンを上から吊し(あるいは机の両側に支持棒を立ててビニールカーテンを張る。),裁判所側と当事者側を隔てたり,一定時間ごとのドア開けによる換気等をしたりすることにより,密閉・密接を回避する方策を取り,調停委員等にも理解を得て,同年6月から新たな態勢で調停を実施することとしたものである。 こうした物的な態勢を整える試みは,全国で行われているようであるが,東京家裁では,こういった物理的な感染防止策にとどまらず,新型コロナ千 葉 和 則調停手続における通信手段の活用の 実情とファストトラック審理の構想

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