3を不当に制限する場合には,無効となるという裁判例もあります。2関する研究会における中間整理」においても,事業承継スキームに議決権信託を利用したスキームも紹介されています。これに対し,議決権信託における問題点を指摘するものとして,議決権を行使し得る受益者が,例えば,株式の配当をゼロとし,役員報酬を多額にするような形で,他の受益者の利益を害するような議決権行使の危険もあると2の指摘もあります。また,議決権行使の基準が不明確で,期間も長期である等,株主の議決権さらに,議決権信託が行われている状況において,特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって,著しく不当な決議がされた場合には,議決権行使についての指図権を有する受益者も特別の利害関係人(会社法4831条1項3号)に含めるべきとの見解上場会社株式について,上記とは異なる状況が発生するかについて,Empty Voting(自らに株式の経済的利益及び危険が帰属していないにもかかわらず,あるいは,自らに帰属する経済的利益及び危険に比例した議決権の数を超えて,当該株式の議決権を行使すること)についての弊害を指摘した見解が参考となります。そして,このEmpty Votingの弊害は,会社の価値に応じて損益が増減する株主に議決権行使をさせることが会社の価値を増大させるというのが会社法の趣旨であるところ,会社の価値の最大化につながらない議決権の行使を招くことにあるとされます。1 道垣内弘人『信託法(現代民法別巻)』(有斐閣,2017年)36頁2 「信託を用いた株式の議決権と経済的な持分の分離」白井正和(第39回信託法学会)。なお,当該論考も,議決権信託を禁止するとの考え方ではなく,議決権信託における問題点を検討するものという考え方になります。3 大阪高決昭和58年10月27日判例タイムズ515号155頁,大阪高決昭和60年4月4 「信託を用いた株式の議決権と経済的な持分の分離」白井正和(第39回信託法学会)16日判例タイムズ561号159頁もあります。
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