9_信託80
17/36

。3私 見実務上の対応5 井上聡「共益権と自益権との乖離(Empty Voting)」岩原紳作=小松岳志編『会社法施行5年理論と実務の現状と課題』(有斐閣,2011年)16頁もっとも,会社法自体が一定のEmpty Votingを予定していることや,年金信託のように,信託受託者が議決権を行使することについての問題があるものではないため,Empty Votingが内容や程度を問わずに自動的に違法・5無効となるものではないとされていますなお,上場会社の場合,議決権信託を行う者が,大株主であり,大量保有報告を提出している場合もあります。この場合,受託者は投資決定権限及び議決権行使権限を有しておらず,「保有者」には該当しないため(金融商品取引法27条の23第3項1号・2号。以下「金商法」といいます。),委託者において大量保有の変更報告や,受託者における大量保有報告を行う必要はありません(これに対し,議決権保有者が移転した場合には,報告が必要になります。)。上記のとおり,議決権信託を行った場合の個別論としての問題点はあり得るものの,議決権信託そのものは有効と考えられます。議決権信託については有効なものと考えられますが,上記の「検討」で触れた問題点の指摘もあるため,議決権信託を設定する場合には,以下の点を検討するのが望ましいと思われます。① 特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって,著しく不当な決議がされた場合には,議決権行使についての指図権を有する受益者も特別の利害関係人(会社法831条1項3号)に含まれる可能性がある点:議決権行使の指図を行う受益者が特別の利害関係を有しているか否かのチェック。又は受益者が特別の利害関係を有していないことの誓約書の疑問1 議決権信託の有効性

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る