9_信託80
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Aは,二男であるBとの間で,①信託の目的を,Aの死亡後,祭祀承継者であるB及びその直系血族がいわゆるA家を継ぎ,墓・仏壇を守っていくというAの意思を反映した財産管理を継続することとし,②当初信託財産を,甲不動産,乙不動産及び丙不動産(以下「本件不動産」と総称します。)並びに金銭300万円とし,③当初受益者をAとし,A死亡時に長男Cが6分の1,長女Dが6分の1,Bが6分の4の割合の受益権を取得し,B,C,D死亡時にBの子供らが受益権を取得することとする信託(以下「本件信託」といいます。)の信託契約を締結しました。本件信託においては,受益者は,本件不動産の売却代金,賃料等,本件不動産より発生する経済的利益を受けることができるものとされていました。Aの死後,Cは,本件信託は遺留分制度を潜脱する意図で設定されたものであり公序良俗(民法90条)に反して無効であると主張しています。Cの主張は認められるでしょうか。検 討5しかしながら,甲不動産及び乙不動産はほぼ無価値であり,これを売却し,又は賃貸により収益を上げることは不可能でした。また,丙不動産については,受託者であるBはこれを売却・賃貸する意思はなく,Aの意思に従い,丙不動産内の仏壇を護り,庭の手入れをするなどしてこれを管理しています(本件不動産に係るこれらの事情を以下「本件事情」と総称します。)。なお,本件信託の設定時,Aの推定相続人はB,C及びDの3名であり,遺留分割合はそれぞれ6分の1でした。前記疑問記載の事案は,東京地判平成30年9月12日金融法務事情2104号78頁(以下「本判決」といいます。)の事案(ただし,当該事案は相続法改正前の民法が適用された事案です。)を簡略化したものとなります。疑問2 信託設定における公序良俗による制限疑問2信託設定における公序良俗による制限

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