A,B,Cが委託者となり,Aが受託者となる信託を設定する場合,Aは委託者兼受託者となります。この信託においては,A,B,Cの契約による設定であるといえますが,一方で,BとCの設定部分については契約による設定であるものの,Aの設定部分については,自己信託となるとも考えられ,その効力発生のためには,信託法4条3項に定める公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録等が必要となるのでしょうか。検 討98 信託法施行規則3条では,①信託の目的,②信託をする財産を特定するために必要な事項,③自己信託をする者の氏名又は名称及び住所,④受益者の定め又は受益者を定める方法の定め,⑤信託財産に属する財産の管理又は処分の方法,⑥信託行為の条件又は期限に関する定め,⑦信託行為で定めた信託の終了事由,⑧その他の信託の条項と定められています。自己信託は,委託者が,信託目的に従い,自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を,公正証書その他の書面又は電磁的記録によってその目的,財産8の特定に必要な事項その他の法務省令(信託法施行規則3条)で定める事項を記載し又は記録したものによってする信託であり,委託者が受託者となるものです(信託法3条3号)。自己信託の場合,委託者の債権者が,委託者が有する財産に対して強制執行しようとした際に,時点を遡らせてその執行を免脱するおそれがあることから,信託法では,幾つかの弊害防止策を導入しています。その弊害防止策の一つは,契約信託においては,信託契約という委託者と受託者の合意のみで信託の効力の発生を認めていますが,自己信託においては,意思表示のみで設定することを認めず,公正証書その他の書面又は電磁的記録に一定の記疑問3 契約による信託と自己信託疑問3契約による信託と自己信託
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