9_信託80
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10載又は記録によってするという要式を求めています(信託法3条3号)。また,①公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録によって設定される場合はその公正証書等の作成,又は,②公正証書等以外の書面又は電磁的記録によって設定される場合は受益者となるべき者として指定された第三者に対して確定日付のある証書による信託の通知を行うことをその効力要件としています(同法4条3項)。本件の場合,Aの設定部分は,委託者と受託者を兼ねていますので,自己信託として上記の効力発生要件を満たす必要がありそうですが,立案担当者の著書によれば,A,B,Cが委託者となり,Aが受託者となる信託を設定する場合,「自己信託ではなく,契約信託の類型に含まれるというべきであ9る。」と述べられています。一方で,学説では,「この見解は,財産拠出者の全員が受託者となるか否かで判断しようとするものである。しかしながら,むしろ,執行免脱を防ぐために,差押えの後に,それ以前から自己信託がされていたと偽装することを防ぐ必要があるか,詐害信託の扱いについて特別の規律を適用すべきか,という観点から判断されるべきであろう。」そうすると,この場合,「Aによって財産が拠出される部分については,自己信託であると見ることも可能10だと思われる。」との有力な見解また,信託財産が不動産の場合の登記については,契約信託の類型に含まれるという見解によれば,「共有者全員持分移転及び信託」の登記申請となりますが,Aによって財産が拠出される部分については,自己信託であると見る見解によれば,Aの設定分については,「信託財産になった旨の登記及び信託」の登記申請が必要となり,また,BとCの設定分については,「Aを除く共有者全員持分移転及び信託」の登記申請が必要となります。10 道垣内弘人『信託法(現代民法別巻)』(有斐閣,2017年)68頁,道垣内弘人編著『条解信託法』(弘文堂,2017年)[道垣内弘人]45頁9 村松秀樹=富澤賢一郎=鈴木秀昭=三木原聡『概説新信託法』(金融財政事情研究会,2008年)10頁があります。

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