3本書は,公益財団法人トラスト未来フォーラムにおいて,2019年9月から2021年2月まで開催した「信託実務の法的論点に関する研究会」の成果として収録したものです。信託法の改正から十数年が経過した現在,商事信託の分野においては,受託者の義務と受益者の権利行使のデフォルト・ルール化等により,従前における多くの法的な問題が解消されましたが,改正されてもなお解釈の余地が残っている事項や改正によって新たに解釈が必要となった事項が存在します。一方,民事信託の分野においては,委託者の権利のデフォルト・ルール化をはじめ,遺言代用信託や後継ぎ遺贈型の受益者連続信託の創設等により,その利用が増大し,さらに,家族や親族の一員を受託者とする信託が急速に拡大しています。そのため,従前の商事信託の分野ではまったく想定していなかった状況で,信託法の解釈が必要とされることがあります。しかしながら,このような解釈が必要とされる新たな状況については,学者や弁護士等の専門家に共有されておらず,このような状況下における信託法の解釈については,学説の存在はおろか,議論さえも行われていないといっても過言ではありません。さらに,信託の規制法においても,ほとんど考慮されずに実務が行われている場合もあります。そこで,本書においては,商事信託・民事信託に関わらず,現状において求められる信託法及び信託規制法(信託業法等)の解釈について,疑問に思う難問を80問厳選し,その問題に一定の考え方と対応策を示すことを目的とするものです。なお,本書における文責は各執筆者にありますが,執筆者の中には,会社等組織に属する者もいるところ,意見等に関わる部分については,はしがきは し が き
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