弁起案
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12第1 はじめに1 はじめに 本書は,民事訴訟において弁護士が作成する書面の中でも特に重要な訴状,答弁書,(最終)準備書面に関して,5つの事例をもとに,望ましい起案作成の技術について解説したものである。 司法研修所における民事弁護の即日起案と同様に,依頼者からの相談内容や事件記録などの資料をもとに起案することを想定し,作成された複数の訴状,答弁書,最終準備書面の起案について,それぞれ参考となるところ,改善が必要な課題となるところを指摘している。 本書の理想的な活用方法は,読者(利用者)が,それぞれの事案について,実際に訴状,答弁書,準備書面を起案した上で,その起案を手元に置きつつ,解説を読むことによって自己の起案と他人の起案の問題点などを知ることにより,自己の起案のスキルを向上させるというものである。とはいえ,忙しい読者が実際に起案の時間を確保することは困難であることも容易に想像できるところである。そこで,忙しい読者ができるだけ短時間で効率よく本書を利用して,実際に優れた起案を作成することができるように,以下において本書の利用方法について触れておくこととしたい。第2 本書の狙い2 本書の狙い 本書は弁護士に求められる書面の起案能力の向上を目指すものであるが,とりわけ訴訟における訴状,答弁書,準備書面を取り上げている。もとより弁護士の活動は訴訟に限られず,むしろ近時は訴訟外の活動の比重が高まっているところではある。しかし,そのような訴訟外の弁護士業務においても,書面作成(起案)の占める割合は一般に高いと考えられる。企業などから法的見解を求められた際の意見書,事故や問題などが発生した際の調査報告書から日常的な法律相談の回答文書など様々ある。この傾向はデジタル化が進んだ将来も変わらないであろう。そしてそれらの書面作成の基本的な考え方・技法は,訴訟における訴状等の起案で求められるものと同様であり,訴訟における書面起案の基本的な知識・能力を応用することにより訴訟外の書面においても,法律的に分かりやすい説得力のあるものが作成できるはずである。読者におかれては,そのことを念頭に訴訟における訴状,答弁書及び準備書面の起案に取り組んでいただきたい。第3 本書全体の構成3 本書全体の構成 本書は大きく第1編と,第2編からなっている。 第1編では起案一般の基本について述べている。訴訟における主張書面作成の基本的な知識などは,毎年司法修習生に配布される司法研修所民事弁護教官室の『民事弁護の手引』をはじめと第1編 総 論SECTION 1Section本書利用の手引き

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