弁起案
14/62

第7 起案に当たっての注意事項7 起案に当たっての注意事項 以上の第2編の5つの事件について,それぞれ冒頭に設題を設けており,設題に従って実際に起案してもらうことを想定している。設題には,司法研修所の民事弁護の即日起案の形式を採用して,起案上の注意事項を記載しているが,実際の訴訟の起案に必要となるものではない。また,当事者の表記や,証拠の引用なども,研修所の民事弁護起案の設題(問題文)でよくある記載を前提としているが,本書利用に際しては,当事者を,「X」「Y」などと簡略することでも問題ない。ただし,司法研修所では,必ず設題(問題文)の指示に従うようにしていただきたい。もとより実務上の起案においては,原告,被告など適切な表記を用いる必要がある。 それぞれの起案の制限時間の目安については,以下を参考にされたい。5つの設題では,司法研修所における即日起案を想定して,使用する記録の頁数を調整している。即日起案では,各起案にかける時間は,手書きで5時間程度が想定される。司法研修所では,訴状などの主張書面の起案の他に,基礎的な知識を問う小問題が設けられることが一般的である。民事弁護の起案では,通常判例付きでない六法のみ参照が許されている。起案の分量に制限などはないことが多いが,その場合でも,簡潔にメリハリの利いた書面を作成しようとすれば自ずと分量の目安は定まるであろう。第8 起案のプロセスの一例8 起案のプロセスの一例 起案に際しては,裁判官の事実認定論などを参考にして,次のような過程に従い起案を進めるとよいであろう。 ①法律相談の状況及び資料の中に現れている具体的な事実の中から,依頼者が求める利益を導くための法律構成(法律効果)に必要となる法律的な事実を抽出する。そこでは主要事実,間接事実の違いまで振り分ける必要がある。 ②抽出した事実が記録上に存在する客観的な資料から争いが少ない事実か,それともさらに資料を集めなければ事実として弱い(争いが予想される)事実か,各事実の強弱を意識する。①と②を検討する中で,当初前提とした法律構成を変更する必要が生じた場合には,改めて変更した法律構成に必要となる事実を検討し直す。こうした検討の中で,起案において必ず書かなければならない事実,そこまで重要ではない事実が整理されるはずである。 ③以上を踏まえてメリハリのある起案を作成する。そこでは証拠の引用の仕方にも配慮が求められる(例えば,重要な事実について証拠が弱ければ,間接事実などで補う必要がある。)。起案に際しては,一般論として,事実についての記載(当該事実が存在するかどうかなど)と,その事実(についての記載)を前提とした法的評価の記載は区別して起案することを心がけるとよい。特に最終の準備書面では争点整理の結果を踏まえてこの点を意識して起案する必要がある。第1編 総 論4 読者は,セクション1の期日等の経過(概要)により,それまでの訴訟の進行等を把握し,訴状・答弁書のほか,当事者及び証人尋問調書を中心としてセクション2の記録を読んだ上で,準備書面の起案をしてもらうことを想定している。 起案例(セクション3),起案解説(セクション4)は,第5と同様である。

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る