弁起案
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Section 1 法律相談の状況33る必要もあったと説明し理解を求めました。30 甲野 それでその日はどういう結論になったのですか。夏子 この日は,結局互いに譲れる部分はないか検討する約束で解散しました。31 甲野 検討の結果どうなったのですか。夏子 私たちからすると,契約前からさんざん振り回された挙句に,渋沢さんの希望に最大限配慮してようやく練り上げた設計を今更変更することなど到底考えられませんでした。ですので,翌日24日に長沢さんから渋沢さんにプランを変更することはできないと回答してもらいました。32 甲野 その後は,話し合いをしていないのですか。夏子 いいえ,その後も仲介業者を交えて新令和不動産で話し合いをしました。渋沢さんは当初は違約金を払ってでも解約したいと言っていたのに,今度は買主の違約であるとして,仲介業者への手数料や樹木伐採の植木屋の費用の負担まで私たちに求めてきました。33 甲野 渋沢さん側の契約違反というのはそれまでと同じ主張ですか。夏子 2月13日にも新令和不動産で話し合いが行われましたが,その日の交渉の中で,突然,渋沢さんは私たちに対して,昨年契約締結する前に現地で会った時に「デッキの上でもって,はっきりと建物の幅について,ひろがっても,既存の建物と比べて1から1.5メートルを超えないようにするという話をしている」と言い出しました。 1月21日にも,1月23日にもそのようなことは言われていなかったので,本当に驚きました。 それでも,私は,相手が何を言おうとしているのかよく聞いて対応するべきだと思ったので,なるべく渋沢さんが何を根拠にそのようなことを言っているのか聞こうとしました。しかし,渋沢さんは,自分の気が変わって,誠実に対応するつもりはないのだと考えざるを得ませんでした。 それでも2月13日は,最終的には,渋沢さんがOKということであれば契約はこのまま進めることで別れています。34 甲野 そうですか。現時点では,渋沢さんから契約を解除するという正式な書面をもらったりはしていないということで,3月1日の決済は予定どおり行われることになっているのですね。夏子 そういうことになります。35 甲野 不動産をこのまま購入するということについては,皆さんもそれでよいのですね。夏子 はい,円満に解決できるならそうしたいです。竹田 私もこれまで建築の打合せに大分時間をかけましたし,予定どおり進められるなら購入したいと思っています。36 甲野 分かりました。それでは,3月1日に買主として履行の準備をしていただき,様子を見ましょう。一応,決済に行くことを,竹田さんから渋沢さん側に連絡しておいていただけますか。夏子 分かりました。

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