第2編・第1章 意思表示の瑕疵に関する事件(訴状起案)36 もし,そのとき渋沢さんが,新築建物は,既存の建物と同じ規模として,できるだけ南側を空けることとか,新築建物の南端は,既存建物の南端から計測して1メートルから1.5メートルを超えて張り出さない,という制限を持ち出したら,私はすぐに仲介会社の長沢さんに抗議したと思います。なぜなら,それまでそのよう話は一切聞いていませんでしたし,仲介を立てているのに,そのような重大な土地の利用制限を売買当事者本人同士が直接交渉することはあり得ないと思ったからです。 10月18日に私は,「あまり大きくならないと思う。」とか「家族三人ですから」というようなことを言いましたが,それは建物の建築制限を了承するというような趣旨ではありません。44 甲野 契約締結日の10月27日に,契約の内容について仲介業者から説明を受けていますよね。夏子 はい,受けました。長沢さんが重要事項説明書や契約書を一つずつ読みあげて内容を確認しました。45 甲野 その際に売主側から土地の利用方法に何か問題があるという話は出ませんでしたか。夏子 一言もありませんでした。46 甲野 契約内容の説明が終わって契約書にサインした後に売主側から何か要望が出たということはありますか。夏子 南側の三角地には,物置とか建物は建てないでほしいということは言われましたが,それ以外にはありません。47 甲野 1ないし1.5メートルというは,2月13日に初めて出てきた数字ということですが,どういう話の流れで出てきたのでしょうか。夏子 渋沢さんが,既存建物の幅からひろがっても,1メートル,せいぜい1.5メートルぐらいの範囲内でしか,新しい家は造っちゃだめっていうふうにおっしゃられたのと,それから,いろいろな数字が出てたんですけれども,ベランダのところを削ったらいいんじゃないかっていう話があって,それが何メートルだったかは少し覚えてないんですけれども,あとは渋沢さんの仲介の松本さんが,私たちが困っていたら,妥協案として,じゃあ,今の計画から1メートルから1.5メートルぐらいとかまで建物の端を下げてもらってはどうでしょうか,という感じで出てきました。48 甲野 皆さんの中で,いろいろな妥協案を出しながら話し合っている中で,出てきた数字ということですか。夏子 はい,そうです。49 甲野 契約前の10月18日に,現地で打ち合わせをしたときに,渋沢さんとしては大きな建物を建ててほしくないというような気持ちを持っているということは感じましたか。夏子 三人だから大きな建物にはならないだろうねっていうふうにおっしゃられたので,それはそういうふうに感じました。50 甲野 10月18日に,建てる位置について,何か具体的な要望を渋沢さんの方から言わ
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