1 当事者 被告は,別紙物件目録1及び2記載の土地及び建物(以下,土地を「本件土地」,建物を「本件建物」,土地建物を併せて「本件不動産」という。)の所有者であり(甲第1号証 〔資料10〕,甲第2号証 〔資料11〕),本件不動産の隣地に居住している。 原告は,令和2年10月27日に本件不動産を買い受けた者である。2 売買契約の成立 原告は,被告から,令和2年10月27日,本件不動産を以下の条件で買った(以下「本件売買契約」という。甲第3号証 〔資料1〕)。 ① 売買代金 1億円(うち手付金1000万円) ② 残代金支払期日 令和3年3月1日 ③ 引渡日 売買代金全額受領日(甲第3号証第7条) ④ 所有権移転時期 被告の代金受領時(甲第3号証第6条)3 原告の弁済の提供 原告は被告に対し,令和3年2月28日までに,本件売買契約の決済日時及び場所を通知し,同決済日に残代金の支払をする旨を通知した上で(甲第9号証 〔資料13〕),同年3月1日,残代金の支払の準備をして指定の決済場所において待機していたが,被告は訪れなかった。4 まとめ よって,原告は,被告に対し,本件売買契約に基づき,本件不動産を引き渡すこと,及び本件不動産について,令和3年3月1日売買を原因とする所有権移転登記手続をすることを求める。第3 関連事実1 本件売買契約締結の経緯第2 請求の原因⑴ 本件売買契約の端緒Section 3 起案例 登記請求訴訟の請求の趣旨には,登記原因及びその日付を記載するのが原則である(不動産登記法18条,不動産登記令3条6号参照) 財産権上の請求(訴訟費用の裁判も含まれる)に関する判決については仮執行宣言の申立てをするのが一般的である(民訴259条1項)。登記手続を命ずる判決には仮執行宣言を付することはできない。 請求を特定するのに必要な事実(民訴規53条1項)を記載する(民訴133条2項2号)。 当事者の記載は,請求を特定するのに必要な事実ではないが,関係者が多い場合には最初に訴状を読む裁判所に登場人物を紹介し,請求内容の理解を容易にすることが多い。本件では,必ずしも必要ではないが,簡単に記載している。 訴状には,立証を要する事由ごとに証拠を記載しなければならない(民訴規53条1項)。 請求を特定するのに必要な事実ではないが,記載している。 「よって書き」である。ここでは,どのような権利又は法律関係に基づいてどのような請求をするかを簡潔に記載する必要がある。最低限訴訟物が分かるように記載しなければならない。 訴状には,請求を特定するのに必要な事実及び請求を理由づける事実に関連する事実で重要なものを記載しなければならない(民訴規53条1項)。その際,請求を理由づける事実と当該事実に関連する事実についての主張とを区別して記載しなければならない(民訴規53条2項)。そこで,請求の原因と別に第3以下で関連事実として,重要な間接事実等を記載している。 訴状の段階では,原告側の言い分に基づいて起案することになるが,当初の聴き取りでは原告の記憶違いの部分が含まれていることもあるので,陳述書の記載と同じ程度593 訴訟費用は被告の負担とするとの判決並びに第1項及び第3項につき仮執行宣言を求める。 原告は,娘夫妻とともに,2世帯住宅を建築して,一緒に住むために,仲介業者に委託して,原告の家の近くで土地を探していた。 原告は本件土地の一部(以下「広告物件」という。)の広告(甲第5号証 〔資料4〕)を見つけ,条件に合致していたことから購入することとし,仲介業者である新令和不動産株式会社(以下「新令和不動産」という。)を通じて広告主に,広告物件の購入申込みをした。⑵ 売買契約締結までのやりとり
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