弁起案
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第2編・第1章 意思表示の瑕疵に関する事件(訴状起案)60 原告が購入申込みをした後,広告物件の担当仲介業者を通じて,被告が原告と会いたがっているとの連絡が入ったことから,令和2年10月18日,原告は被告宅を訪問し,被告と顔合わせを行った。 解散後,その日のうちに,被告は,仲介業者経由で原告に対して,契約締結日を10月24日としたいとの意向を示し,原告もこれに同意した。 しかし,契約締結予定日の前日である10月23日に,被告から原告に対して本件土地の広告物件に含まれない部分(以下「南側三角地」という。)も合わせて購入して欲しいとの希望が伝えられた。 原告は,一度はこれを断ったが,契約締結予定日の10月24日当日になって,被告は,南側三角地を売買契約の対象にしないのであれば,原告とは契約しないと言い出した。 原告は,契約締結日当日の突然の申入れに驚いたが,本件土地の立地も気に入っており,同様の広さの土地が何時売りに出るかも分からなかったことから,熟慮の結果,被告が新たに出した条件で本件不動産を買い受けることとした。⑶ 本件売買契約の締結 令和2年10月27日,本件売買契約が締結され(甲第3号証〔資料1〕),原告は手付金1000万円を被告に支払った(甲第6号証 〔資料3〕)。2 残代金決済日(引渡日)までの事情 令和3年1月16日,被告から,本件土地と被告自宅の敷地間に設置する塀の件で原告の建物の設計業者も交えて打合せをしたいとの要望があり,原告は,同月21日に,被告を訪問した。 原告は,この際,現況測量図に建築予定の建物の配置した図面(甲第7号証 〔資料7〕,甲第8号証 〔資料8〕)を被告側に見せた。 同月22日,被告から,仲介業者経由で,原告が建築予定の建物(以下「新築建物」という。)が被告の思いと異なるものなので,翌日の23日に集まって打合せがしたいとの連絡があり,原告は同月23日,再度被告宅を訪問した。 被告は,そこで突然,本件土地に建築する建物の大きさを条件にしていたと主張するに至った。 これまで述べた経緯から明らかなように,本件売買契約において,被告が主張するような建物の建築制限という条件は存在しない。原告は,被告の理解を得るために話合いを行ったが,被告の明確な理解は得られなかった。 原告は,被告に対して,令和3年2月25日,本件売買契約書に従い,新令和不動産担当者経由で,決済場所を新令和不動産大宮支店,日時を令和3年3月1日午前10時とする旨及び本件不動産のに詳細な主張をすることは後に誤りが判明し訂正が必要になるリスクもある。したがって,裁判官が事案を把握でき,かつ原告に有利な心証を持ってもらうために必要な事実,事情を簡潔に記載すべきである。 売買契約の端緒や,売買契約締結までのやりとりは,後に争いになる被告の錯誤の主張に対する,被告の主張が成り立たないことの根拠となる間接事実となる。

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