弁起案
6/62

はしがきii もとより主張書面が代理人ごとに千差万別であることは前述したとおりであって,唯一絶対の正解起案などない。その意味では,本書に示した各起案,とりわけ参考となる起案として掲載したものも,あくまで我々がベターと考える参考例にすぎない。各起案が,熟達した弁護士からの批判に耐えうる内容の書面となっているか,いささか心許ないということも,正直に告白せざるを得ない。その反面,経験の浅い弁護士や司法修習生が研鑽を積むための道標のひとつとなる内容であるという,ささやかな自負もある。 課題の残る起案は,我々のこれまでの指導経験を通じて遭遇したパターンを思い起こしながら,経験の浅い弁護士や司法修習生が陥りがちな起案の例示を試みたものである。同一事案での複数の起案を対比することにより,いかなる起案が良い起案と評価されるのかをより理解しやすいようにすることを目指している。 本書は,日本加除出版の渡邊宏美氏,牧陽子氏,小室裕太郎氏(当時)の辛抱強いナビゲートがなければ,日の目を見るには至らなかった。また,当時司法修習生であった由井恒輝弁護士にはモニターとして協力をいただいた。この場を借りてお礼を申し上げたい。 2021年6月著者を代表して  金子 稔

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る