逐条ガイド相続法―民法882条~1050条―
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(相続財産の管理人の選任)第952条 前条の場合には,家庭裁判所は,利害関係人又は検察官の請求に237第6章 相続人の不存在╱第952条(相続財産の清算人の選任)959条〜相続人の不存在951条相続財産管理人に対して相続財産の保全に必要な処分を命じることで回避可能なこと,955条および956条の存在等を指摘して,成立要件に該当するとする立場(新版注釈677~678頁〔金山=高橋〕,新基本コメ相続166頁〔副田〕)と,②仮に成立要件の該当性を認め,判決確定前に相続財産の清算が実施され,特別縁故者への分与や国庫帰属が行われた場合には,相続人に不当な結果となるため,判決確定を待つべきであり,その間は,推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理について定める895条1項や相続財産の管理について定める918条2項(令和3年改正で同項削除)を類推適用し,相続財産管理人を選任すべきであるとし,成立要件には該当しないとする立場(中川=泉452頁)がある。 裁判所の実務は①を採用し,相続財産管理人を選任した上で係属している人事訴訟の判決確定まで清算手続を進行させない扱いとしているとされる(新基本コメ相続166頁〔副田〕)。よって,相続財産の管理人を選任しなければならない。2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは,家庭裁判所は,Ⅲ 相続財産法人の成立・法的性質 被相続人が死亡し,相続人のあることが明らかでない場合は,その相続財産は,被相続人の死亡時に法律上当然に法人となる(中川=泉454頁)。したがって,法律上は相続財産法人設立のための特段の手続や公示・登記等は不要である(新基本コメ相続166頁〔副田〕,新注民⒆697頁〔常岡〕)。相続財産法人の存在が対外的に明らかになるのは,相続財産管理人の選任(952条)がされてからである(大判昭和8・7・11民集12巻2213頁)。 相続財産法人の法的性質については,被相続人の包括承継人とみる説,遺産の清算を目的とする清算法人類似の財団法人のようなものとする説があるところ(新基本コメ相続166頁〔副田〕,新注民⒆697~698頁〔常岡〕),判例は,「被相続人の権利義務を承継した相続人と同様の地位にある」とする(最判昭和29・9・10判タ42号27頁)。

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