詐害行為
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42 責任財産の保全のための制度と理解する立場(責任財産保全説)第1節 伝統的理解制度根拠を真摯に検討することがより重要となる。 詐害行為取消権の制度根拠に関しては,これを債務者の責任財産の保全のための制度とする理解がこれまで有力であった。債権を有する債権者は,債務者に対し,権利を請求することができ(請求力),給付を受領したらこれを保持することが認められ(給付保持力),さらには任意に給付をしない債務者を相手方として民事訴訟を提起し(訴求力),そして,強制執行を行うことができる(執行力)。これがいわゆる債権の四つの力(機能)である。 そこで,金銭債権を念頭に置くならば,債権者が債権の満足を得るための最終的な手段としては,債務者の財産に対して強制執行を行うこと,すなわち執行力を発動させることにある。しかし,この執行力も債務者に執行対象となる財産(責任財産あるいは一般財産などと呼称される。)が減少してしまえば,本来の力(機能)を発揮することができない。債務者が意図的にその責任財産を減少させる等の行為を行った場合,その行為を取り消し,これを回復させる制度が必要となる。これが詐害行為取消権が認められた根拠である。このように考えるのが伝統的な立場である。詐害行為取消権の制度根拠を債務者の責任財産の保全に求めるという理解である。 この理解は現在,通説となっているが,さりとて,詐害行為取消権の制度根拠を責任財産の保全の趣旨に求めることだけでは説明が付かない状況も生じている。その一つは,倒産法上の否認権制度との平仄である。2004年の破産法の改正により否認権規定が大幅に変更されたことを受け,民法上の詐害行為取消権に関しても,否認権規定との平仄を意識した解釈,運用を試みる姿勢が有力となっていった。否認権は集団的債務処理を図る倒産法上の制度であり,ここでは債務者個人の責任財産の保全という趣旨にとどまらず,債権者間の平等,偏頗行為の防止という要請が強く働くことになる。このような要請もまた詐害行為取消権の行使の場面において取り込まれているのである。

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