詐害行為
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第1編 概説第1章 制度根拠5 改正前民法425条は,詐害行為取消しの効果について,「すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる」と規定し,いわゆる平等主義を規定していた。上述の責任財産保全説は,この平等説と親和的な見解であった。そのような中において,この平等主義に異論を唱え,債権者は詐害行為取消権を行使することによって,他の債権者に優先して債権の満足を受ける制度であるという見解が存在する。(注1)この見解によれば,詐害行為取消権は,「責任財産の保全」という限定された枠組みではなく,広く「第三者に対する債権者の権利(債権の効力)」を認める権利として理解すべきことになる。 また,優先主義そのものに立つことはせずとも,債権者が詐害行為取消権を行使するインセンティブを図るために事実上の優先弁済機能を積極的に肯定すべきという意見も存する。取消債権者が受益者あるいは転得者に対し返還を求める対象が金銭の場合,改正前民法当時の判例法理(大判大10・6・18民録27輯1168頁)が取消債権者による直接請求を許容し,他の債権者に先んじて自己の債権を満足させることを事実上,認める扱いをしていたことに対して,積極的にこれを容認する見解も存在していた。(注2)第2 優先主義に基づく見解(注1) 片山直也『詐害行為の基礎理論』(慶應義塾大学出版会,2011年)594頁。片山教授は,我が国の詐害行為取消制度はフランス法系の立法であるから,制度の解釈・運用に際しては,母法であるフランス法の研究が不可欠であるとしたうえで,フランスの今日的通説は対抗不能訴権であることに着目する。そして,この対抗不能説に基づき,取消債権者の債権回収が優先的であることを主張する。(注2) 平井宜雄『債権総論〔第2版〕』(弘文堂,1994年)293頁以下。第2 優先主義に基づく見解

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