詐害行為
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第3節 債権関係秩序説第3節 債権関係秩序説第1編 概説第1章 制度根拠7第2 筆者の理解(債権関係秩序説) このように,改正法の下でも詐害行為取消権の制度根拠としては債務者の責任財産保全という観点は維持されたものの,その内容は曖昧であり,また,制限付けられたものというべきである。倒産法上の否認権との平仄を図り,偏頗行為的な詐害行為類型を明文化したことは,詐害行為取消権の新しい制度根拠を見出す必要性を訴えている。とりわけ,改正法425条は,詐害行為取消請求の認容確定判決の効力が債務者及びその全ての債権者に対しても及ぶことを規定し,これまで請求認容判決の効力は訴訟当事者間(取消債権者と受益者あるいは転得者の間)にしか及ばないとされてきた,大判明44・3・24民録17輯117頁(以下「明治44年判例」という。)以来の相対的無効構成を見直している。この点がもたらす影響は真に大きいものがある。詐害行為取消権を従来的な債務者の責任財産保全のための制度と理解する限りは,なぜに訴訟当事者でない債務者やその他の債権者にまで判決の効力が及ぶのかに関する説明が困難となる。また,425条が規定する判決の効力とは具体的にどのような内容なのかを検討するためには,改正法下における新しい詐害行為取消権の制度根拠を見出す必要がある。この点を明らかすることは重要でありながら,未だ十分な検討がなされていない点である。 この点について,筆者は,新しい詐害行為取消権の制度根拠を,債務者の責任財産の保全・回復を基底としながらも,取消債権者と債務者及び全ての債権者間に存在する債権関係秩序の維持のための制度として理解すべきと考えている(債権関係秩序説)。その結果として,倒産法制との平仄・接続が当然のこととして意識され,さらには債務者の事業継続性の要請などもまた詐第1 新たな制度根拠の発見の必要性第2 筆者の理解( 債権関係秩序説)

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