詐害行為
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8第3節 債権関係秩序説(注4) 『高須・詐害取消効果』141頁以下。害行為取消権行使の場面において考慮されることになるのである。(注4)他の債権者の存在を前提とした集団的な債権関係秩序が侵害されたような場合に,その秩序を回復・維持するために民法が用意した制度が詐害行為取消権であり,債務者の財産減少行為のような典型的な秩序侵害行為は無論のこと,債権者間で偏頗行為となるような債務者の行為(民424条の3)や,強制執行を困難とするような財産の現金化行為(民424条の2)なども,債務者を中心に形成される集団的な債権関係秩序を侵害するものとして,取消権行使の対象となるのである。筆者はこれを債権関係秩序説と名付けている。 債権関係秩序説に基づいて詐害行為取消権の規律を検討することによって,以下のような解釈の可能性が生じる。① 詐害行為取消権の要件として規定される424条の一般的詐害行為類型と424条の2以下の特殊的詐害行為類型との位置付け,とりわけ,伝統的な財産減少行為にも特殊的詐害行為類型にも該当しない行為の扱いに関する解釈指針を示すことが可能となる。424条を重層的規範構造を有する規定と理解するものであり,会社分割行為等の詐害行為性の判断に有益となる。この点は第2編第2章において詳細に検討する。② 債務者の行為のうち,財産権を目的としない行為については詐害行為取消権の行使が認められないと規定される(民424条2項)。しかし,離婚に伴う財産分与や慰謝料請求,相続における遺産分割や相続放棄などは財産行為性を伴う家族法上の行為であり,解釈論上,議論が錯綜している。このような行為の詐害行為性の判断にあたっては,家族法上の行為を債権関係秩序の中でどのように位置付けるかの考慮が不可欠となる。この点は第2編第3章において検討する。③ 425条が債務者及びその全ての債権者に及ぶと規定する請求認容確定第3 新たな解釈の可能性

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