詐害行為
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1第第1節 不動産譲渡行為第1節 不動産譲渡行為第2編 行為類型別第1章 財産減少行為991 債務者返還型の典型例2  時価相当額での売却行為をめぐる判例法理と改正法第1 判例法理と改正法の内容(注1) これに対し,動産の引渡し及び金銭の支払(価額償還を含む。)を求めるケースでは,取消債権者による直接の権利行使を認めるものであり(民424条の9),直接請求型の権利行使方法となる。 債務者が無資力状態でその所有する不動産を譲渡する行為は,詐害行為の典型例である。そのうえで被告となる受益者・転得者が当該逸出財産を所有しており,現物返還が認められるケースでは,債務者への所有権登記名義の返還が認められるという点で,債務者返還型の典型例ともなっている。(注1) 債務者が不動産を無償で贈与する行為や,時価より安価で売却する行為は,財産減少行為の典型例であり,従来から詐害行為取消権の対象とされてきた。これに対し,時価相当額での売却行為に関して詐害行為性が肯定されるか否かに関しては,財産は減少していないとしてこれを否定する見解も存在し,これを肯定する見解との間で改正前には見解の対立が存在したところである。 時価相当額での不動産売却行為の詐害行為性について,改正前民法当時の判例(大判明44・10・3民録17輯538頁)は,不動産を隠匿,費消しやすい金銭に替えることは原則として詐害行為になるとしたうえで,例外的に,代金を他の債権者に対する弁済その他「有用の資」に充てるためなどの動機,目的を有し,その資に充てた場合には例外的に詐害行為性が否定されるとしていた。章第1 判例法理と改正法の内容財産減少行為に対する詐害行為取消訴訟

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