詐害行為
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1 受益者に対する請求第1節 不動産譲渡行為100客観的な詐害行為性の判断の場面において,債務者の動機,目的といった主観的要件を取り込むことによって(相関関係説),詐害行為となる場合を限定しつつ,一方で,不動産が金銭に換価されることにより強制執行が困難になるという点に着目して詐害行為性を肯定することを可能としたのである。しかし,「有用の資」に充てるという,専ら債務者側の売買の動機,目的あるいは代金の使途により詐害行為性の有無を決定するのは,売買が取り消されるか否かの予測可能性を低め,取引の機会を奪う(萎縮効果が生じる。)との批判も存在し,改正の機運が生じていた問題である。 改正法は,上記判例法理に対する批判を踏まえ,否認権に関する破産法161条、民事再生法127条の2の規定と同様の規律を新たに設けている。424条の2の新設である。その概要は第1編第2章第1節及び第3節第1に記載したとおりであり,また,成立要件や訴訟にあたり具体的に留意すべき点は本編第4章に記載するとおりである。そこで,本章では時価相当額での不動産売却行為を除いた財産減少行為としての不動産売却行為に言及する。 財産減少行為としての不動産譲渡行為に関して,取消債権者が受益者に対しその取消しを求める場合には424条に基づく請求となる。この場合,受益者に対する所有権移転登記手続がなされ,現在もその受益者の下に所有権登記名義が存在する場合には,訴訟における請求の趣旨は,不動産譲渡行為(贈与契約,売買契約等)の取消しと債務者・受益者間の所有権移転登記の抹消登記手続を求めるものとなる(民424条の6第1項前段)。ただし,判例実務は抹消登記請求に代えて移転登記請求を求めることを認めるので,必要に応じて,抹消登記手続ではなく移転登記請求手続を求めることも可能である。受益者に移転登記手続がなされた後,受益者が当該不動産を担保として融資を受け,抵当権設定登記手続がなされているような場合において,抵当権登記第2 検討すべき要件・行使方法

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